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が、欧米とくにアメリカにおいては、このセクターを政府でも民間でもない第三のセクターという意味で「サード・セクター」という概念を使用することが多い。これは政府と民間の混合を「第三セクター」とするわが国とは異なる5)。このサード・セクターについての性格について、すでに20年以上前に論じているのが、T.レヴィットである。彼は『サード・セクター』と題する書物で市民活動の性質について論じている6)
同書によれば、第三セクターをつぎのように把握している。伝統的には社会は二つのセクター(公的セクターと私的セクター)に分割される。私的セクターは私企業であり、公的セクターはその他のすべてのものである。しかし、他のすべてのものでは広すぎ、普通に公的セクターというときそれは政府を指し、その残余領域をサード・セクターとする。サード・セクターは多種多様な組織や制度から成り立っており、私企業ないし政府のいずれもが行っていない、またはうまく行っていない、あるいはしばしば十分行っていないことを行うことが一般的な目的であるとする。著者が例示するサード・セクターとしては教会、友愛組織、労働組合、交響楽団、救世軍、盲人や肢体不自由者のための協会、近隣組織、オーデュポン協会などである。そして、サード・セクターを他のセクター同様に社会の中心的で基本的な要素として評価するのである7)
さらに、レヴィットはサード・セクターを「(旧来の)サード・セクター」と「新サード・セクター」とに分類する。まずその前に、サード・セクターをどのように特徴づけているかというと、活動範囲の広さ、その組織原理の多様性、多くの参加者の精力的な献身とともに、他のセクターから区別する実行機構(組織原理)として、ボランタリズムをあげている。すなわち、サード・セクター制度を特徴づけるのは、その存在が大部分そのメンバーの個人的、かつ自発的な努力に依存していることにあるとするのである8)。そして、旧来のサード・セクターの特徴として、資金源がほとんど自発的会員の自発的な寄付かあるいは会費であり、ほとんどの組織が専門職スタッフを擁しているけれども、地域レベルでの日々の仕事の多くはボランティアによって行われる点を指摘している9)
一方、新サード・セクターは、奉仕よりは改革と社会変革に関心がある運動体である。このセクターは多様な戦術を用いることによって政府に対して、圧力をかけることを目的としている。これらの組織には、常勤のスタッフは存在せず、資金も有しない。大衆の注意をひくためにパプリシティを主要な武器として活動している。メディアを利用することによって組織の目的を達成しようとするのである10)。
このレヴィットによる分類で注目すべきなのは、圧力団体的性格を有するものとして新

 

 

 

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